腐ったこの世界で
ジェラルドは何も言わない俺に呆れたのか、ため息をつきながら俺を見た。
「俺はお前が下世話な趣味を持っているとは思っていない」
「ジェラルド…」
「だがこの世界には少なからず俺たちのことを気に入ってない奴がいる。そういう奴らは喜んで食いつくぞ」
分かっている。そうなると分かっていたからグレイグも最初、アリアの存在を疎ましく思ったのだろう。疑わしい芽は早々に摘み取るべきだと。
――だが、本当にそれで解決するのだろうか。
俺は確かに彼女を金で買った。それで厄介の種になるからとまた捨てたら、私利私欲のために奴隷を買い求める奴らと何も変わらないんじゃないだろうか。
何よりそれは、ようやく自然に笑顔を浮かべることができるようになったアリアから、また笑顔を奪う行為だ。
「ふーん…」
面白いものでも見つけたかのようなジェラルドの声に顔を上げれば、なぜかニヤニヤ笑っている顔と目が合った。
「そんな顔するようになったのか」
「は?」
そんな顔ってどんな顔だ? ジェラルドの言ってる意味が分からなくて首を傾げれば、ジェラルドは楽しそうに笑った。