腐ったこの世界で
食事が終わった後、あたしはクレアたちに急き立てられるまま部屋に戻った。そのまま泡でいっぱいのお風呂に入れられる。
「ちょっと…!」
いきなりのことに驚いてお風呂から出ようとしたら、クレアに容赦なく押し込められた。そのまま髪に香油を塗りたくられる。
反対側ではイリスに丁寧かつ迅速に爪や体を磨かれた。いったい何が起こっている?
「ねぇ、なにかあるの?」
聞いてもクレアは答えてくれない。イリスに目を向けたら気まずそうに視線を逸らした。むぅ。これはイリスを攻めた方が分かるかも?
「ねぇ、今日は誰かが来るの?」
「…アリアさま、」
あたしの顔を見てイリスが困った顔をする。そんな顔をされるとすっごい悪いことをしているような気になった。うぅ…。そんな顔されたら聞けないよ。
あたしはクレアに責め立てられるようにお風呂から上がり、用意されてたドレスを着せられた。お出掛けように伯爵が作らせたやつ。
「やっぱりお出掛け?」
それならどうして教えてくれなかったんだろう? あたしは二人に着飾られ、玄関まで連れてかれた。
そこには同じように着替えを済ませた伯爵が馬車と一緒に待っていた。一気に嫌な予感が募る。
「なんで伯爵が…?」
「それはもちろん、君と出掛けるからだよ」
輝くばかりの笑顔で伯爵はあたしに笑いかけ、逃げようとするあたしの手を掴んだ。そのまま馬車に放り込まれる。
「出してくれ」
無情にも、馬車は動き出してしまった。