アイ・マイ上司とlove☆days
すると携帯を手に持ったまま、すっかり忘れ去っていた大平さんの元へと歩み寄った輝。
コツ、コツ…と、此処でも小気味良い革靴音が響くから、私の反論を痞えさせた。
「大平…、携帯貸せ――」
「え…、なんで」
「いいから」
突然に仕事モードへなり変わった輝の声色で、しぶしぶ携帯を差し出す大平さん。
すると携帯と携帯を近づけ、あろうことに赤外線通信を始めてしまった…。
「…これで良し、と――
大平、バラ撒くなら“今のヤツ”にしてくれ」
事が終わると、フッと笑って再び彼の手元へ携帯電話を収めた輝。
「はっ…、頭オカしくナイっすか?」
「そ、そうだよ…、何やってんの輝!?」
これには大平さん以上に私が驚かされて、もう声を荒げずにはいられない。
「大平さー、カラ残業とか職務怠慢とか告げ口したいようだが…。
残業記録やら書類作成時間やら…、斉藤さんのPC確認するか?
お前が主張する意見とは、真逆の証拠が残ってるぞ?
それは俺も同じこと…、しいて言えば“残業時間外のコト”に口を挟まれてもな…。
俺が気に入らないのは大いに結構…、だが彼女に手を出すのは許さない」
「・・・っ」
実に端的でいて冷静な口調と物言いは、上司の稲葉課長ソノモノだというのに。