皮肉と剣と、そして俺
「その供述の信用度はどれくらいだ?」
「約6割と言う所でしょう。残りの4割は実行して、成功するか。
その確信が無いからです」
「つまり、帰れるかどうかは運任せということか…」
誰に話し掛けるでもなく、ナオトは呟いた。
天井に視線を走らせ、空虚を見つめている。
その様子を見た魔術師は部屋に入った時から不自然だと感じていた、この場所の異変に気付いた。
「軍基地なのに、人の気配がしませんね」
魔術師にとっては何気ない一言であったが、ナオトにとっては傷跡を抉る言葉だ。
「…隣国との境界線で小競り合いが多発しててな。
国境を押さえられたら、ひとたまりもないこの国は今、軍総出で出払ってるんだよ」
「…軍総出なのに、貴方は此処に居て良いのでしょうか」
どうやらこの魔術師、何食わぬ顔で人の傷口を深くするのが得意らしい。