皮肉と剣と、そして俺
此処に居て良いのか、という魔術師の問いにナオトトは答えなかった。
「それより何故軍に関係のない魔術師が俺の事を知っているんだ?
誰から情報を買ったんだ」
剣の柄に手をかけ、相手の動揺を誘うが、そこは魔術師。
ちょっとやそっとの事では靡かない。
喰えない奴だ。
「ご安心下さい。情報は一切口外致しませんよ。
最も、貴方の身近な人物から戴きましたがね」
「俺の身近な人物?」
魔術師の意外な物言いに間抜けな声を上げる。
それもそのはず、ナオトがこの世界の人間でない事を知っている人物は一人しか居ないのだから。
でも、だとしたら俺は売られた…?
「中佐が貴方を売ったと思われてますね?
ですが、それは誤解。寧ろ逆です」
「逆?」
マコトの心の内を読んだように言葉を重ねてくる魔術師。
「ええ。私は貴方を助けに来たのですから」
そう初めに申したでしょう?
と続けた魔術師は何故だか機嫌が良い。
前髪が長くて片目しか見えないが、口元は明らかに笑っている。