皮肉と剣と、そして俺
「時空の狭間?」
「そう。世界と世界とを仕切る境界線とでも言っておこうか」
魔術師はどうやらその狭間とやらを作り出す事が出来るらしく、それを作ればナオトは元の世界に戻れるのだ。
ただそれには条件があって、まずは満月の夜であること。
そして自分が最初に踏んだ地から帰ること。
そうしなければ、ナオトの命は確保されない。
「君が中佐と会ったのはこの基地の中庭だったよね?
だから、君は中庭からしか元の世界には戻れないという訳だよ」
「この世界で最初に踏んだ地が、中庭だから…」
「ご名答」
そして魔術師はフードを目深に被り、立ち上がった。
ナオトは眼だけで姿を追う。
「今夜は満月の夜だ。したがって今夜しか実行する時間がない。
戻るか戻らないかは自分で決めるんだ。
…戻るのなら、今夜零時に中庭に来ると良い」
そうして魔術師はマントを靡かせて颯爽と去って行った。