皮肉と剣と、そして俺
「して、貴様は何者だ。隣国の刺客でないことは確かのようだな」
剣の血払いをし鞘に収めながら女はサファイアの瞳を向ける。
「そういう事をを訊くときは自分から。だろ?」
「……面倒な奴だな。私はエイダ=ヴァネッサだ。軍人だ」
「そう、俺は久瀬ナオト。ごく普通の一般人だよ」
制服に付着した土を払い落とし、ナオトは立ち上がる。
エイダに視線を向けると、神妙な面持ちで小首を傾げている。
「クゼ、ナオト。変な名だな、貴様」
「それはお互い様だよ」
「減らず口を叩いてくれる」
意地の悪い笑みを湛えてて言うエイダはさながら悪魔のようで。
ナオトはここへ来て初めて口元が引きつるのを感じた。