皮肉と剣と、そして俺
「…貴様この世界の人間ではなかろう?」
不意に発せられた声にナオトは驚愕する。
まさか、自分を一瞥しただけで瞬時に事を理解する人間がいるとは微塵も期待していなかっただけに、ナオトは今まさに開いた口が塞がらない状態だ。
「あんたは頭の回転が速いみたいだね。
確かに俺はこの世界の住人ではないよ。
でも、だからと言って此処に来た経緯も、その根底も、戻り方も。
何一つ分からないんだ」
どこか他人行儀に言葉を紡ぐナオトにエイダは若干の違和感を覚えた。
が、しかし。
次の瞬間にはそれも心の隅に追いやられていた。
「ほう。ならば貴様を拷問にかけるチャンスと言ったところか」
「…物騒な事言わないでくれない?」
言うとナオトは身構える。
エイダが言うと冗談に聞こえない。
その上、その光景が容易く想像できるから余計ナオトには恐ろしいのだった。
「まぁ良いではないか。とりあえずは我々に敵対する人物でないと分かったのだからな。
歓迎してやるぞ、ナオト」
その様子だと、どうせ行く宛も無いのだろう。
そう視線で語りかけてくるエイダは、微かではあったが年齢相応の優美な笑顔を見せた。