皮肉と剣と、そして俺
「分かった。そっちがそう言うなら、足手まといは退散するとするよ」
「私とて、暇ではないんだ。そうしてくれると助かる。…それと」
そこで言葉を切ったエイダは一呼吸置いてから、口を開いた。
その鮮やかなサファイアでナオトの瞳をしっかりと捉えて。
「近々、お前に訪問者が来るだろう。その時は、決して感情に流されては駄目だ」
表情は真剣そのものなのに、サファイアの瞳は小さく揺れていて、寂しげな色をしていた。
けれど、ナオトはエイダの微妙な変化に気がつけるほど冷静ではない。
「意味の解らない忠告ありがとう。
その感情とやらが、この軍を指しているなら心配の必要はないよ。何の未練も無いからね」
それからナオトはドアノブに手をかけ、執務室を出る最後に
「さようなら、ヴァネッサ中佐」
と言った。