皮肉と剣と、そして俺


「分かった。そっちがそう言うなら、足手まといは退散するとするよ」

「私とて、暇ではないんだ。そうしてくれると助かる。…それと」


そこで言葉を切ったエイダは一呼吸置いてから、口を開いた。

その鮮やかなサファイアでナオトの瞳をしっかりと捉えて。


「近々、お前に訪問者が来るだろう。その時は、決して感情に流されては駄目だ」


表情は真剣そのものなのに、サファイアの瞳は小さく揺れていて、寂しげな色をしていた。

けれど、ナオトはエイダの微妙な変化に気がつけるほど冷静ではない。


「意味の解らない忠告ありがとう。
その感情とやらが、この軍を指しているなら心配の必要はないよ。何の未練も無いからね」


それからナオトはドアノブに手をかけ、執務室を出る最後に
「さようなら、ヴァネッサ中佐」
と言った。



< 7 / 22 >

この作品をシェア

pagetop