=凪=
「いいか、しっかり俺に捕まっとけよ」


ヘルメットの中から、とても優しく、でも強い口調で先輩が言った。


私は、頷くのが精一杯だった。



ゆっくりと走り出したバイクの後ろで、私は少し怯えていた。



『なに?いったいどうすればいいのよぉ』


どこに手を置けばいいのかわからないまま、先輩のジャケットをとりあえず掴んだ。


少しづつ、あがっていくスピードに先輩との密着度も高くなっていく。


もう、周りの景色なんて、見る余裕なんて全くない。


『怖いよ』


気が付くと、恥ずかしさも忘れ、先輩にしがみついていた。



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