=凪=
冷たい風の中に、潮の匂いを、微かに感じる。


『海?』



それから程なく走ると、思った通り、目の前に海が見えて来た。



ちょっと刺すような、冷たい風。



海、特有の波の音。



気持ちが、上がっていく。



そしてバイクは、磯の匂いの真ん中に停まった。


「ワーッ!!」


目を輝かせる私。


「悪かったな、こいつの慣らしに付き合わせて」


そうバツの悪そうな先輩。


「大丈夫です。先輩のわがままには慣れてますから」


海に来た開放感からか、私は自然と笑顔になっていた。



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