=凪=
ためらうように、ゆっくりと唇が離れる。



「ごめんな。俺、行ってくるわ。部屋、テキトーにくつろいでて」


そしてペシペシと、菜津子の頬を軽く撫でてから、陸は玄関へ向かった。



「もぅ。今日はどこの女?」


枕を抱えて、唇を尖らす。



「ばーか。菜津子以外は女じゃねーよ。職場の集まりって言ったろ?」



陸は、笑いながら答えて、ドアに手をかけ、振り返って、付け加えた。


「もし、帰るならちゃんと鍵を掛けてな」


「待ってるもん!」


プッとむくれる菜津子に、ちょっぴり後ろめたさを感じながら、陸はドアを閉めた。



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