=凪=
「レンお兄ちゃん。みて!」



走っていた菜津子は、突然しゃがみこんで、前を走る蓮の顔を、笑って見上げていた。



「なに?」



蓮が、菜津子の指差す方に目を向けると、一匹の蝶々が、小さな花で羽根を休めていた。



「可愛いよね。なっちゃんのにしたいな♪」


満面の笑みで、そういう菜津子に、蓮は優しく答えた。



「そうだね。かわいいなっちゃんの蝶々にしたいね」


そしてこう続けた。


「でも、なっちゃんだって、遊んでいるときに、急に腕を掴まれたらどうする?
自由がなくなっちゃったら悲しいよね?」



蓮の目は、真剣だった。


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