=凪=
必死で首を振り続ける私の顔を見て、菜津子は更に続けた。



「クルミがさ、バレンタインで本命チョコ渡したこと、知らなかったの?」



『知らなかった……』

何かが、崩れ落ちる感覚に捕われた。


『クルミが、なんとなく先輩の事を気にしてた。私に、あれこれと聞いてきていたけど、まさか本気だったなんて……』



私は、かなり戸惑っていた。



「まぁ、あんたにとっては、昔馴染みの単なる先輩なんだろうから、どこに出掛けようとクルミや誰かが、とやかく言える事じゃないんだけどね」



何も言えない私に、菜津子は、呆れ顔で一気にそう言った。



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