=凪=
「どうとっても、先輩はさ、後輩の事で心がいっぱいだと思うよ」


「こ、後輩?」



「そう、こ・う・は・い♪」



言葉を、ひとつひとつ、はっきり切りながら私を指差した。



『そんな訳が無い……先輩が私を…………ス…キ…?』



戸惑う私に、帰るよと伝票を手にするクルミ。



そのクルミの後ろにある、苦しさなんて考えられなかった。



店を出て駅までの道程で私は、暗礁に乗り上げた小船のように、ひどく怯えていた。



前を歩くクルミの背中を見つめながら、色々な事を考えていた。




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