=凪=
『−―6月の花嫁は一生、幸福になる』



そう、言われている、式、当日。



菜津子の強い希望により、鐘の音のよく響く教会で式が行われた。


私達は頼まれた仕事を終え、用意された席で始まりを待つ。



十字架の下には、もう一人の主役である陸さんが背筋を伸ばし、緊張した面持ちで立っていた。



『いつか……いつか私もこんな風に幸福になれるのだろうか?』



賛美歌に包まれた、清らかな空気を肌で感じていた。



そして、決して答えてはくれない、先輩の背中に視線を向けた。




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