=凪=
クルミが傍を離れて、私一人になった時を見計らって、声をかけてきたのだ。



「に、逃げてなんかいません」



私は、目を泳がせた。


「いや、お前は俺を見ない振りしてたろ?尾沼とは、話してたよな?」



おかしな雰囲気を感じたのか、尾沼さんとクルミが来た。



「とにかく、外に出ようや。な、柳崎?」



穏やかな、そして有無を言わさない尾沼さんの促しで、私達はその場を離れた。



その様子を菜津子は、心配そうに見ていた。


すぐに駆け寄りたかったが、陸さんの制止が入り、成す術がなかったと後で聞かされた。


< 253 / 265 >

この作品をシェア

pagetop