=凪=
「おう!陸!!」


尾沼さんが、軽く手を上げる。


菜津子は、なにやら急いで、コソコソしている……

酔っ払ったんじゃなかったと、胸を撫で下ろしたのもつかの間……


「おじゃまします…」

影がもうひとつ……


固まったままの私は、その顔に見覚えがあった。


「柳崎じゃないか!」

座っていた、男の一人が、そう声をかける。


「そこで会ったんだよ。暇そうだから、引っ張ってきたんだよ」


陸と呼ばれた男が言った。


「わりぃ、邪魔するな」


私の眼球は、みるみる開いていく……


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