=凪=
『なんで?どうして?』


立ち尽くしたまま、頭がパンクしそうな程に回転している。


『私、騙された?』


『ううん、菜津子は先輩のことなんか知らないはず……』


『逃げなきゃ。逃げなきゃ……』



『あれっ?私、逃げなくちゃ駄目?』



『私……何か悪いことした?』



『いや、あの人は天敵だよ』



焦る気持ちと、否定の言葉が、身体の中で交差する。



そんな、私を他所に、先輩はすでに、場に馴染んでいた。



もちろん、私の存在には、まだ気がついていないようだ。



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