=凪=
部屋へ戻ると、クルミとは、お互いに自分の席へと座った。


私はまた一人で、烏龍茶の入ったグラスを持ったまま、小さくなっているしかなかった。


「ナギちゃん……って呼んでもいい?顔色が良くないけど大丈夫?」


「……えっ?」


突然の声に、顔を上げると、尾沼さんがいつの間にか隣に座っていた。


大丈夫の問いに、答えが見つからないまま、コクりと小さく頷くのが精一杯だった。


「お前、相変わらずだな」


尾沼さんの後ろから、聞き慣れた声と、悪戯っ子のような顔が見えた。


私は、凍りついたまま、その笑顔を見つめた。



『天敵だ……』


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