=凪=
「久しぶりだな。俺の卒業以来か?」


横目で私を見る。


『会いたくなかったわよ』


私は、欝陶しそうに、視線を斜め上へと向けた。


「そんな顔すんなよ」

苦笑いの先輩。


『生れつきですよぉだ』


下唇を噛み締め、下を向いた私。


ぽんぽんと、言葉を飛ばす先輩に、答えなんかあるはずがない。


さっきより、苦痛な時間が来た事だけは、明確な事実だった。


「名取、お前さぁ聞いてる?」


先輩が、下から顔を覗いた。



「は、はい!聞いてます」


慌てて答える私の顔を見て吹き出した。


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