=凪=
「名取、本当に大学の時、そのまんまだな」

「そ、そう、……です、かぁ?」



「あの時と、同じ顔してるぞ。今でも、俺のこと、嫌いだろ?」


「…!!」


突然の不意打ちに、鼓動は一気に早くなる。


「そういえば、お前、覚えてるか?」


昼間に思い出した、『あの日』が脳裏を過ぎる。


「あの時は、無理矢理引っ張り出しまって、悪かったな」



先輩は、鼻をポリポリ掻きながら、そっぽを向いた。



私のドキドキは、そんな仕草と、しおらしい一言で急降下してしまった。



そして、変わらない、先輩をじっと見据えていた。



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