ガラスの靴
どれくらい時が経ったのだろうか……



「ただいま。」



母が帰ってきた。


するとすぐにバタバタと私の部屋にやってきた。


「おかえりなさい。お母さん」



私は何食わぬ顔をして母に挨拶をした。



すると、部屋の隅にいる私の顔を覗いてきた。



私の顔を見てみるみる母の血相が変わっていく。


母は私の顔のあざに触れながら



「またあの人にやられたのね。」



母は目に涙を溜め



「ごめんね…ごめんね…。」



そう言って、母に抱きしめられた。



「私は大丈夫ですから、安心してください。」



そう言って泣きじゃくる母をなだめた。


でも、泣いている母の姿を見ても、母のぬくもりは感じなかった……。



どうせ……私のために離婚なんてしないんでしょ?


私がこんな想いをしてるって知ってるくせに……。


なんだかんだいってあの男が好きなんでしょ…。


そんな想いがよぎる。



私は絶対に、恋愛に溺れるようなまねはしない。


こんな女にはならない……。
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