ブラッディ アリス
「……っ」
キオネは口の周りを赤く染め、ゆっくりと床に倒れていく。
「…ゲームオーバーね…」
静かに部屋に入ってきたアリスが、動かないキオネを見つめながら呟いた。
「おかえり、アリス。その血…怪我したのか?」
カイルはアリスの服についた血を見て、不安そうにアリスに近づく。
「大丈夫よ。これは白雪姫の下僕の血」
アリスは血が染み込んだ服をそっと触ると、カイルに笑顔を見せた。
「さて…きっとまだ少しは意識があるでしょう」
アリスはキオネのもとに行くとしゃがみこみ、キオネの耳元に口を近づける。
「…あなたの最後に食べたリンゴ…あれにはラビが調合した毒が入っていましたのよ…」
微かな呼吸をする、あと残りわずかな命を感じるキオネ…。
アリスの一言を聞き、瞼の裏に映すのは、自らが殺めた父親と母親の顔…。
ドクン…ドクン…という心臓の音が、こんなにも愛しく寂しいなんて…。
「私はべつに、夫人のためにこんなことをしたのではありませんわ」
アリスはキオネの耳元で囁き続ける。