ブラッディ アリス


「……っ」


キオネは口の周りを赤く染め、ゆっくりと床に倒れていく。


「…ゲームオーバーね…」

静かに部屋に入ってきたアリスが、動かないキオネを見つめながら呟いた。


「おかえり、アリス。その血…怪我したのか?」
カイルはアリスの服についた血を見て、不安そうにアリスに近づく。

「大丈夫よ。これは白雪姫の下僕の血」
アリスは血が染み込んだ服をそっと触ると、カイルに笑顔を見せた。

「さて…きっとまだ少しは意識があるでしょう」

アリスはキオネのもとに行くとしゃがみこみ、キオネの耳元に口を近づける。

「…あなたの最後に食べたリンゴ…あれにはラビが調合した毒が入っていましたのよ…」


微かな呼吸をする、あと残りわずかな命を感じるキオネ…。
アリスの一言を聞き、瞼の裏に映すのは、自らが殺めた父親と母親の顔…。


ドクン…ドクン…という心臓の音が、こんなにも愛しく寂しいなんて…。



「私はべつに、夫人のためにこんなことをしたのではありませんわ」

アリスはキオネの耳元で囁き続ける。


< 101 / 657 >

この作品をシェア

pagetop