ブラッディ アリス
「…まったく…。あの性癖、どうにかしていただきたいわ!」
車の助手席に乗ったアリスは機嫌悪そうに両腕を組む。
「カイルも辛くないわけじゃないよ。アリス」
ラビは車のエンジンをかけ、アリスの髪を優しく撫でた。
「…ふん…」
そろそろ月と交代を迎える太陽が、昨日と同じ輝きで眩しく照らす。
兎の瞳と同じ色をした真っ赤なオープンカーが、街に流れる風を切りながら走る。
何も知らない街の人々はゆっくりと自分の家へと戻っていく。
そんな光景を黙って見つめながら、アリスは明日の新聞の記事を想像していた。
一日で、崩れ去った…一つの大富豪家。
まるで5年前のあの事件のように…。
「帰ったら…報告文書を作らなきゃいけませんわね…」
「…そうだな…」
アリスは切ない顔をして、鼻歌を歌う。
まだ身も心も幼かった頃…お母様が歌ってくれた歌…。