ブラッディ アリス


「ええ。存じておりますよ。…それで、アベル家当主であるあなたが、私に聞きたいことは…何でしょうか」


元恋人という鎖を外し、二人は『アベル家当主』と『ストレイズ神殿司教』として向かい合う。

「…そうですわね…。まず…私の記憶では、ベルアベスタ家の遺産はこの神殿への寄付となっていたはず…。それを確認しておきたいのですが…」

その言葉に、ラビが頭の中で今まで目を通してきた書類の記憶を辿る。


アリエス国貴族界代表…アベル家。
アリエス国内全貴族の情報を管理し、統括する責務を負う富豪大家。

アリスの執事になったラビに与えられた任務は、屋敷内に保管された貴族界の重要文書を理解し、暗記することから始まった。

「確かに…。私の手元には、その契約書があります」
司教は優しい表情で答える。


「…では、明日…遺産相続の手続きを行う書類を郵送いたしますわ。それに必要なことを明記した後、速達で返送してくださるかしら?」





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