ブラッディ アリス
「…さきほど、ジャックが神殿に見えました。…話は彼に聞きました。あなたは、私が
彼らに言った発言に対して、お怒りなんでしょう?」
ラビの背で、ぎゅっと強く握られた拳。
今にも司教に殴りかかりそうな自分を抑えるラビは、微かに震えている。
「あの発言を彼らに言ったことは認めますよ。ですが、悪気があったわけではありません…。こんなことになるとは、思いもしなかったですし…」
少し苦痛な表情を見せる司教…。
それを見ながら、アリスは小声で「ふん」と呟く。
「…シャルル様の声帯手術…。あれを行ったのも、ジャックです」
「…なんですって…?」
司教の思わぬ一言に、ずっと平静だったアリスが目を丸くした。
「彼は優秀で、天才だ。リリスの黒魔術…それを自分なりにアレンジした手法で…彼は数分で手術をやってみせた…。私も驚きました」
ジャックというあの男の存在が、だんだんと大きく深くなっていく…。