ブラッディ アリス
ⅩⅥ
「アリス…どうしたの…?」
屋敷に帰る途中、アリスはずっと無言でいた。
ラビの問いかけにも答えず、何かを真剣に考えているようだった。
アリエス国城下町…ハマルに着く頃には、すでに辺りは闇に包まれ、街を照らすのは一つの月…。
アベル邸に戻ったアリスは、すぐさま自分の書斎に向かう。
リビングにいたナナリは平然と自分を横切ったアリスを見た後、ラビに攻め寄る。
「アリスを殺しに行ったんじゃなかったの…?」
その言葉に対し、ラビは寂しそうに笑って答えた。
「…失敗したよ」
アリスは部屋の扉に内側から鍵をかけ、パソコンを開いた。
「……なによ……どういうこと…?」
カタカタと勢いよくキーを打ち、すでに頭の中で構成された報告文書を作成し始める。
「…赤い瞳なんて…そうそういるものじゃない…」
ブツブツと呟きながら、ものすごい速さで文書を完成させていくアリス…。
机の上には、亡き父と母の写真…。
壁にはアベル家当主としての称号を掲げた表彰状が飾ってある。
「…あいつが言ってた…。『そろそろ…退屈だって…思ってた頃でしょう…?』…」
アリスはカタンッと力強くキーを打った後、指を止め…扉を睨みつける。
「『あなたも』」