ブラッディ アリス
「Zodiak ~Die Welt von Aristokraten~」
Ⅰ
ベルアベスタ家の一件から3日後…。
事の翌日には出した遺産相続手続きについての書類が、早くもシャリオ司教から返送されてきた。
封筒の中には書類とは別に、アリス宛の手紙…。
「…『お気をつけください。あなたのそばにいる…お二方の紳士に』…」
その一文だけが、そこには記されていた。
「二人って……」
アリスは一人、文書に目を通した後、手紙を机の引き出しに仕舞う。
そして書類を大きな鞄に丁寧に入れ、部屋を出た。
「お待たせいたしましたわ。ラビ」
鞄を持ちリビングに現れたアリスは、いつもと同じ黒い服を身に纏い、今日はリボンではなく真っ赤な薔薇の髪飾り。
「忘れ物はないかい?アリス」
ラビは優しく微笑むと、アリスの荷物を持つ。
「たかが一泊でしょう?何か忘れたとしても…問題ないですわ…」
アリスはツンとした表情で答える。
「大事な書類は、忘れちゃいけないよ」
ラビはにっこり笑い返すと、長い銀髪を靡かせて屋敷の外へ向かった。
アリスはチラチラとリビングを見渡し、ナナリの姿を探したが…どうやらナナリは部屋にこもっているようだ。
「…行ってまいりますわ…」
小声でアリスはそう言うと、ゆっくりと玄関へ歩いて行った。