ブラッディ アリス




会合の会場は、アルデバランで一番大きな一流ホテル。

すでに午後6時近い都市内では、夜の惑わしを思わせるような人々が群がっている。


「あと1時間くらいで7時…ね」

「チェックインして、部屋に荷物を置いたら…丁度いい頃だな…」


ラビはホテル内の駐車場に車を止め、早々と降りアリスの荷物を持つ。

「あのリムジン…。セト家のだわ…」

アリスは遠く離れた所に停めてあるリムジンを見つけると、さりげなくラビに言う。

「…僕達もリムジンで来れば良かったかな?」

ラビは不安そうなアリスに笑顔で答えた。



それから二人はホテルのカウンターでチェックインを済ませ、ホテルの副総支配人によりスイートルームに案内された。

「何度目かしら…ここに泊まるのは…」

アリスは見慣れた部屋の様式に、今は亡き父と母の生前の姿を思い描く。

「アリス…哀愁に浸るのは、晩餐が終わってからにしよう」

ラビは優しく後ろからアリスを抱きしめ、耳元で囁いた。




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