ブラッディ アリス
Ⅱ
会合の会場は、アルデバランで一番大きな一流ホテル。
すでに午後6時近い都市内では、夜の惑わしを思わせるような人々が群がっている。
「あと1時間くらいで7時…ね」
「チェックインして、部屋に荷物を置いたら…丁度いい頃だな…」
ラビはホテル内の駐車場に車を止め、早々と降りアリスの荷物を持つ。
「あのリムジン…。セト家のだわ…」
アリスは遠く離れた所に停めてあるリムジンを見つけると、さりげなくラビに言う。
「…僕達もリムジンで来れば良かったかな?」
ラビは不安そうなアリスに笑顔で答えた。
それから二人はホテルのカウンターでチェックインを済ませ、ホテルの副総支配人によりスイートルームに案内された。
「何度目かしら…ここに泊まるのは…」
アリスは見慣れた部屋の様式に、今は亡き父と母の生前の姿を思い描く。
「アリス…哀愁に浸るのは、晩餐が終わってからにしよう」
ラビは優しく後ろからアリスを抱きしめ、耳元で囁いた。