ブラッディ アリス
優しい笑顔に、どこか冷徹さを思わせる瞳…。
容姿も気品も才能も全て、人々に有無を言わせないほどの…麗しき『貴族界の長』。
さすがに普段強気なアリスでも、彼の前では足が竦む。
「アリス…!」
次の瞬間、緊張が高まるアリスの胸に、懐かしい声が響いた。
声の方を向くと、自分の母と思わせるかのような姿で現れた女性…。
「会いたかった…!アリス!」
女性はアリスを抱きしめると、すぐにアリスの右上を見上げた。
「…リナリアも…お久しぶりですわね…」
「…ルナリア伯母様…」
アリスの緊張は一気に解れ、少し驚いたように目を見開く。
アリスの母リナリアの、双子の姉…ルナリア・マリア…。
彼女はジェミニ国貴族代表のマリア家当主を務める。
マリア家は貴族界でも「聖なる御家」と呼ばれ、神聖な一族として崇められていた。
その理由は…マリア家特有の能力『霊力』を持ち、邪を祓ったり癒しを行う『白魔術』が使えるとされているため。
「…今日はリナリアだけですのね…。そばにいるのは…」
マリア家の人間は、生まれつき当然のように霊が見えるのだ。