ブラッディ アリス
Ⅵ
「隣の個室使いたいの。鍵を開けてもらえる?…あと、二人分の食事を持ってきてちょうだい」
イザベラは会場の外で待機していた従業員にそう伝えると、俯くアリスの顔を無理やり上げた。
「…アイラインとシャドウ…それからチーク…。あとは良さそうね」
すでに涙の止まったアリスの目元は、化粧が落ちて黒く滲んでいる…。
従業員たちは個室の鍵を開け、中に料理を運ぶ。
「悪いわね」
全て揃った後、イザベラは従業員に笑顔で礼を言った。
「さて…」
部屋に入ると、イザベラはアミに目で合図をする。
それを確認したアミは、個室に用意されてあった化粧台の上にメイク道具を並べ始めた。
「先に食べちゃいなさい。リップも直してあげるから」
イザベラはにっこり笑うとアリスを椅子に座らせた。
「ありがとう…ございますわ…」
アリスは暗い表情で、目の前に並べられた料理を眺める。
「…アリス様…」
心配そうにアリスを見つめるラビ…。
「ラビット…食事とメイクが終わったら、二人でホテル内のカジノにでも行ってらっしゃい。みんなには上手く言っておくから」
イザベラはラビにそう言うと、自分も席に座り、料理を食べ始めた。