ブラッディ アリス
…ポーン…。
「…愛してるよ、アリス」
ラビは優しくそう言うと、アリスをゆっくり自分から離し、先にエレベーターを降りていった。
「…っ」
唇をかみ締め、顔を上げるアリス…。
「演じきるのよ…アリス…」
アリスは自分自身にそう言い聞かせると、まっすぐラビの後ろ姿を見つめ頷いた。
少女の背景で、妖しく輝く真っ白な月…。
あの日あの瞬間、止まった時計の針を動かすことを選んだ。
それは兎が仕掛けた薔薇色の罠にはまること…。
まずは自らを鮮血に染めて、少女は小さな穴に堕ちて行く。
…殺戮を…快楽に…。
退屈で…残酷なこの世の中が『舞台』であるなら、終幕まで演じきらなければならない。
…そうでもしなければ…『ゲームオーバー』…。
終焉は訪れることなく、また…繰り返されてしまう。