ブラッディ アリス
「…アリス・アベル…」
「あのアベル公爵だわ…」
「本当にまだ子どもだな…」
「…あれで当主だなんて…」
次々と聞こえてくる、好奇な貴族たちの声。
その中で平然と座るアリスは、数字が並ぶボックスを眺める。
「『チャック・ア・ラック』…か」
後ろで呟いたラビの言葉に、コクンと頷くアリス。
「…まずは今夜の運試しですわね…。ラビもやります?…隣…空いてますわよ」
そう言いながら、アリスはにこやかな顔をしたディーラーを見つめる。
ディーラーは何も言わず優しく微笑み返すと、「どうぞ」と言うようにアリスの隣の席にラビを招いた。
「私とラビ以外…いないみたいですわね…」
先ほどまでこのテーブルで遊んでいた人々は一旦賭けをやめ、興味深そうにアリスとラビを見ている。
「…じゃあ…僕は…とりあえず…」
ラビは少し考えた後、ゆっくりとボックスにチップを置いていく。
「…なら…私は…」
続いてアリスも、静かにチップを賭けてゆく。