ブラッディ アリス
防音壁で覆われたVIPルーム内は、賑わう場内とは裏腹に、薄暗く…足音まで響く…。
「さてと…。何かしら?…相談って」
部屋に入るなり、アリスは大きなソファーに腰掛けた。
「…うん…」
カルサは少し躊躇うように、アリスの向かいのソファーに座る。
ミカエルは何も言わず、二人から少し離れた所にあるテーブルに寄りかかっていた。
「…二人は…もちろん知ってるよね…?…僕の国の現状…」
「…サジタリウス…。今も尚、この世界で五本の指に入るほど、貧富の差が激しい国…ですわね」
アリスは数回訪れたことのあるサジタリウス国を思い返す。
サジタリウス城を中心に、貴族が拠点とする主要都市…カウス・メディア。
その周辺には、貴族や裕福な家の者が住まう都市や街と、貧しく暮らす者たちが集う村落が、ちょうど半々くらいの面積で広がっている…。
「でもそれは…王家の問題ですわ。…あなたが悩むことじゃ…」
「そういうことじゃないんだ。僕が相談したいのは」
カルサはそう言うと、ひどく緊迫した表情でアリスの顔を見た。