ブラッディ アリス
「いや…気づきませんでしたね…。自分のタバコの残り香なんて…」
ジャックはスッとアリスの頭上から手を避けると、衣服の奥に拳銃をしまった。
「まぁ…恐らく…あなたのお考え通りですよ。優秀なアリス・アベル公爵様」
ジャックはさりげなく自分に向けられた銃口を逸らすと、嬉しそうな顔でアリスに微笑みかける。
「…そんなに…私が退屈そうに見えますの?ミスター・ジャック」
アリスは「ふぅ」とため息をつくと、拳銃の持つ手を下ろす。
「…言ったでしょう?…あなたと私は同じ運命のもとにあるんですよ…。お互いゲームを楽しまなきゃ…不公平だと思いませんか?」
「…ゲームなら…ラビが提供してくれますわ…。ですが…それさえもあなたの意図なら…」
アリスはぎゅっと唇をかみ締め、ジャックを睨む。
「全て、ご存知ですのね。ここにいる全員が」