ブラッディ アリス
震える体…速さを増す鼓動…。
アリスの後ろ…ジャックの目線の先には、深刻な顔をして二人を見つめるウィッシュと青ざめた顔のフォルチュナが立っていた。
「…それはどうかわかりませんよ。…聞いてみるといい…。あなたの信じる者…全てに」
ジャックは優しい顔をして一礼をすると、アリスの横を通り…二人のもとへ歩いて行く。
「…ア…アリス…」
震えながらアリスに近づくフォルチュナ…。
「……許しませんわ……絶対…!」
アリスは振り返り三人を鋭い目で睨みつけると、エレベーターに向かい走り去った。
「…ふっ…バレてしまいましたね。…アダム公爵様」
ニヤリと笑うジャックに、冷ややかな視線を送るウィッシュ。
「…仕方ない。アベル家の宿命だ…」
ウィッシュの一言を聞き、泣き始めるフォルチュナが床に膝をつく…。
「どうして…どうして何もできないの…?!…あの子は何も悪くないのに…!」
少女が堕ちて行くのを…わかっていても…。
…誰も、手を差し伸べ助けることは許されない…。
少女は独り、舞台の上。
傍観者の…残酷な大人たちの目の前で。
白い薔薇を、深紅に染める。