ブラッディ アリス
「おはよう。今…起こしに行こうと思ってたよ」
部屋を出た瞬間、ちょうどテーブルに朝食を並べ終えたラビが笑顔でアリスを迎えた。
「……おはよ…」
アリスはラビに優しい笑みを返し、静かに席に着く。
「……疲れてたみたいだね。アリスがベッド以外で寝るのは初めて見た」
ラビは穏やかな雰囲気でそう言うと、アリスのグラスにジュースを注ぐ。
「…疲れてなんかいないわ。大丈夫よ…」
アリスは一瞬ラビの顔を窺い、少し恥ずかしそうに目を逸らした。
そんなアリスを見て、ただ少し微笑んだだけのラビ…。
二人はそれから無言のまま、朝食を食べ始めた。
「うーん…」
朝食が終わり、ソファーに座って書類を睨むアリス。
「…どうする?報告」
ラビは悩むアリスの前にカフェラテを差し出す。
「ありがと。…そうね…。今さら文書を直す気はないわ。一番厄介な人間…ウィッシュ様には報告済みだし」
アリスはバサッと乱暴に書類をテーブルに置き、カフェラテを半分くらい一気に飲み込む。
「…まぁ…今回は突っ切るわ。それしかないもの…」
まっすぐに書類を見つめ…アリスは心の中でグッと何かを決意した。
そんなアリスの横でコーヒーを飲みながら、ラビは窓の外を眺める。
「…アダム公爵とイヴ公爵が真実を知っているという過程の上で…?」
「…ええ。…ジャックをベルアベスタ侯爵家一件の…容疑者として、報告いたします」