ブラッディ アリス
「…早く席に着きなさい」
アリスのすぐ後ろで、低く威圧的な声が響く。
「アンッ……スティルバロ公爵様…。おはようございますわ…」
アンディビッヒを思わず名前で呼びそうになったアリスは、慌てて席に着いた。
「おはようございます」
「おはようございます。皆様」
アンディビッヒに続いて場内に入ってきたのは、ウィッシュとフォルチュナ…。
そんな二人を無意識に睨むアリス。
「昨夜はだいぶ遅くまで起きていた方々もいらっしゃるようですが…、全員が時間通りに揃って安心いたしました」
自分の席に向かいながら笑顔を振りまくウィッシュ。
フォルチュナはアリスと目が合うと、切ない顔をして一瞬だけ頭を下げた。
「…何かあったの?」
フォルチュナの動作を目敏く見ていたセイレンが、アリスに小声で尋ねた。
「いや…とくに…。身に覚えありませんわ…」
アリスはそう答えると、本当に不思議だというような顔をして少し首を傾げる。
内心は、なんとも言えない悔しさや怒りを抑えるのに必死だった…。