ブラッディ アリス
「…なるほどね…」
ふぅと溜め息をついたカイルは、急いで起き上がりアリスの部屋へ向かった。
コンコン…
カチャ…
「早かったわね。王子様」
少し不機嫌そうなアリスはベッドの上で寝そべりながらカイルを睨む。
「キオネに妬いたの?お嬢様」
ニヤニヤとした表情でカイルは部屋に入った。
テーブルに飾ってある見事な薔薇を一本だけ抜き取り、カイルはアリスに差し出す。
「…薔薇には棘…。あの子は昔から私のものを欲しがったわ…」
アリスは薔薇を受け取ると、目を瞑って香りを嗅ぐ。
そして花びらを一枚、唇の間に挟めて千切る。
「ふーん…」
カイルはベッドに座ると、アリスの長い金髪をいじりだした。
「カイルに落ちちゃったみたいね。かわいそうな白雪姫…」
クスクスと笑うアリスは、遠くの天井を見つめる。
「…侯爵の大事な大事な白雪姫…」
プチプチと花びらを唇でむしるアリスの手は、薔薇の棘で一滴の血を流した。
「つまり?」
カイルはニヤリと笑いながらアリスを眺める。
「…侯爵の愛人は白雪姫…。それを知った夫人はきっと…世間に公表するとでも言ったんでしょ…」
腕をつたう鮮血もまた、まるで薔薇色の唇のよう…。