ブラッディ アリス
「それでは、始めましょう。時間も限られてることですし」
ウィッシュが席に辿り着くと、着席していた全員が立ち上がった。
淡いブルーのテーブルクロスが敷かれた円卓に、席順は晩餐会のときと同じ。
ウィッシュは昨夜のことなど何もなかったかのように、平然と会議を進めていく。
「これより…ゾディアック春季会合…本会議を始めます。優先的な議題としては、私のもとに文書がきた…ビュリエント公爵によるカンケル国規定石油輸入出関係についての特例報告…。それから…ヴァイオリア公爵家とイヴ公爵家による合同事業の発表。そして、アリエス国貴族界において不正に執り行われた処刑についての報告をアベル公爵より……ですね」
じっとウィッシュを見つめたまま、数人から送られる視線を感じるアリス…。
「その後、各グループに分かれて問題点や疑問点を議論していただきます。それが終わったら、各グループにより意見を発表。他に議題以外で何かあれば、その時に言ってください」
ウィッシュは全員の顔を見た後、着席の合図をした。
事前にウィッシュに送られた文書の内容がまとめられたレジュメが、ウィッシュの執事シャンによって全員に配られる。
どの議題よりも…ベルアベスタ家の一件が大きく取り上げられている。
「それでは、ビュリエント公爵…お願いします」