ブラッディ アリス
アリスは心を落ち着かせ、一人一人の顔を見ながら話し始めた。
「先週に発生いたしました…アリエス国在籍貴族…ベルアベスタ侯爵家夫人シャルル・コクト・ナ・ラソエラに対する不正な公開処刑事件…及び、ベルアベスタ家当主ガガゼル・ベリシュ・ベルアベスタ侯爵殺害事件、並びにご息女キオネ・ブランシュ・ネージュ・ベルアベスタの失踪事件におきまして、管理不行き届きでしたことを、まずは深くお詫び申し上げます」
アリスは言葉を詰まらせること無く、スラスラと予定通りの謝罪を行う。
場内の何人かは、席を立った瞬間に胸を張り堂々とするアリスの様を誇らしげに眺めていた。
「…レジュメに記載されてある通りですが、この一連の事件については恐らく『ジャック』という名の男が糸を引いていたんじゃないかと思われます。私は処刑の前日、処刑執行の事実を知り…」
アリスはまず処刑を知り、ベルアベスタ家を訪問したことを話した。
その後、侯爵やキオネに会い話を聞いたこと、処刑に立ち会うためベルアベスタ家に宿泊したこと、その夜シャルル夫人に真実を告げられたこと、そして侯爵とキオネの関係を決定するものを撮影したこと…など、処刑が終わるまでの事実はほぼ全て偽りなく説明した。
「…それからキオネ嬢の手紙を読んだ私は、執事と共に指定された場所へと向かいました」