ブラッディ アリス
笑っていたカイルの表情が真顔になる。
アリスは花びらをむしるのを止め、血が滲む指を舐めた。
「…殺られる前に…」
「殺るわよ」
カイルは自分の中で何か納得したように2・3回頷き、立ち上がって窓の外を眺めた。
アリスもゆっくりと体をお越し、髪を手で整える。
「それが事実ならキオネと侯爵が何らかの方法で夫人を処刑まで運んだ…」
「まぁもともと侯爵と夫人は政略結婚だったみたいだし…昔から仲があまり良くなかったわ。キオネも虐められてたし」
「だけどそんなに非道な人なのか?あの侯爵…」
「ふ…」
アリスは思い当たる節があるように鼻で笑った。
「…シャルル夫人はラソエラ家の長女だった…」
「ラソエラ?たしか5年前に一家全員殺された…」
「そう。全員が死んで、あそこの莫大な遺産はシャルル夫人のものとなった…」
「…」
カイルとアリスは見つめ合う。
「ラソエラ家を殺したのは…」
「私は侯爵だと思ってる」
アリスは自信があるかのようにニヤリと笑った。