ブラッディ アリス
「車…戻してくるから」
二人が屋敷に入ると、早足で外に向かうラビ。
そんなラビに対しコクンと頷いたアリスは、玄関を入ってすぐにある広いリビングのテーブルを見る。
「あ、これ、父様からアリスへのお詫び」
カイルはテーブルの上にある大きなピンク色の薔薇の花束に指を差すと、ソファーに腰掛けた。
「…相変わらずね…国王も…」
国王から贈られるピンク色の薔薇は、ある意味『常に美しき穢れなき少女のようにあれ』というメッセージ。
「…こんなの…今のアリスには無意味なのにねぇ…」
カイルは不適な笑みを浮かべると、薔薇の花びらを一枚ちぎって眺めた。
「…アリス!おかえりなさい!」
吹き抜けになっている二階の廊下から、明るい声が響く…。
アリスは声のする方を見上げると、切ない顔で微笑み返す。
「ごめんなさいね。今…練習してるから…終わったら行くわ」
「大丈夫ですわ。構わず続けてくださいませ。お姉様」
アリスの目線の先には、姉ナナリ…。
ナナリは笑顔で頷くと、また部屋へ戻って行った。
「…大変だね…」
カイルは気の毒そうにアリスを見つめる。
「もう慣れたわ」
アリスは平然とした風を装うと、ドサッと勢いよくソファーに座った。