ブラッディ アリス


「車…戻してくるから」

二人が屋敷に入ると、早足で外に向かうラビ。

そんなラビに対しコクンと頷いたアリスは、玄関を入ってすぐにある広いリビングのテーブルを見る。

「あ、これ、父様からアリスへのお詫び」

カイルはテーブルの上にある大きなピンク色の薔薇の花束に指を差すと、ソファーに腰掛けた。

「…相変わらずね…国王も…」

国王から贈られるピンク色の薔薇は、ある意味『常に美しき穢れなき少女のようにあれ』というメッセージ。

「…こんなの…今のアリスには無意味なのにねぇ…」

カイルは不適な笑みを浮かべると、薔薇の花びらを一枚ちぎって眺めた。



「…アリス!おかえりなさい!」

吹き抜けになっている二階の廊下から、明るい声が響く…。

アリスは声のする方を見上げると、切ない顔で微笑み返す。


「ごめんなさいね。今…練習してるから…終わったら行くわ」

「大丈夫ですわ。構わず続けてくださいませ。お姉様」

アリスの目線の先には、姉ナナリ…。

ナナリは笑顔で頷くと、また部屋へ戻って行った。



「…大変だね…」

カイルは気の毒そうにアリスを見つめる。

「もう慣れたわ」

アリスは平然とした風を装うと、ドサッと勢いよくソファーに座った。






< 232 / 657 >

この作品をシェア

pagetop