ブラッディ アリス
「心配しないで。飛行機に乗ったら着替え渡すから。まぁ人は固定観念が強いからね…。あんな場所にアベル家当主とアリエス国王子がいるなんて誰も思わないよ。…大丈夫」
どこからそんな余裕が出てくるのだろう…。
アリスとカイルは醒めた目でラビは見つめると、それぞれ納得がいかないというような顔で目線を前に戻した。
車の先には、広大なエアポートが見え始める…。
「久しぶりね…」
草原を切り抜けるアリエスの風を感じながら、アリスは微笑んだ。
そうしてエアポートに辿り着いた三人は、すでに待機していたカイルの側近の元へと向かった。
側近のハインリヒは、アリスに丁寧に挨拶をした後、三人を飛行機へと案内した。
「ラビの車…頼むね」
カイルの一言に、ラビは車のスペアキーをハインリヒに渡す。
「かしこまりました。お気をつけくださいませ」
ハインリヒは深くお辞儀をすると、機内に乗り込む三人を穏やかな笑顔で見送った。
「カイルの付き人なんて…大変よね…」
アリスは動き出すジェット機の窓から、滑走路の隅に立つハインリヒを見つめながら呟く。
「…ホント優秀な奴だよ。死体運びも解体も…なんでもやってくれるからね」
カイルは笑顔でアリスに返すと、ゆっくりと自分の席に座り込んだ。