ブラッディ アリス
「……もうすぐ出るバスがある。行くよ」
数分後に駆け足で戻ってきたラビは、少し焦っている様子で二人に笑顔を見せた。
村落へ行くバスには2・3人の乗客しかなく、ガラ空きの座席の中、後ろから二列目にラビ、その前の座席にアリスとカイルが座った。
「もうマントを脱いでいいよ」
ラビが後ろから小声で言う。
二人はマントを脱ぎ、少し乱れた服装と髪形を整えた。
「そうえば今日…ノーメイク?」
カイルは真横にあるアリスの顔を覗く。
「いまさら…?…当たり前でしょ…」
アリスは呆れたように顔を背ける。
「…アリスはスッピンでも全然美人だからね…。着いたら顔に泥でも塗ろうか?」
「……それ…ホントにやったら…大事なとこ撃ち抜くからね」
「…あはは…」
二人のヒソヒソとした会話が車内に響く。
そんな二人の後ろでは、微笑むラビが静かに準備を始めていた。
件名:もうすぐ到着する。
本文:僕の可愛いアリスには、手を出さないこと。