ブラッディ アリス


意外にも、楽しげな雰囲気でスタートした『ミルフィーユ』の食卓だった。

だが、ほんの数秒で、その場は時が止まったように、全員の視線が一点に集中された。



「………」

皿の上に落としたスプーンを、じっと見つめるアリス。

「……どうした…?…アンジェラ…」

カイルが心配そうな顔をして、アリスの顔を覗き込む。

「……このスープ…」

アリスはゆっくりと顔を上げ、ザリチェを見た。


「…ナッツが入ってる……。…私、ナッツ食べれないの」



アリスの一言に、ハッと目を見開くザリチェ。


「…そう…。じゃあ次から…入れるのをやめるわ…」


その瞬間、ザリチェは初めて、少し微笑みを見せた。




「…………?」


その場にいた全員が、顔を見合わせる。



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