ブラッディ アリス
包丁をぎゅっと握り、アリスの真後ろに立つタウティが、アリスの肩を優しく撫でた。
「…兄さん!わかってたの?」
リビングにいる三人には聞こえないように、小声で焦るザリチェはタウティを見る。
「外で見たときから…わかってたよ…。どんな姿であろうと…この方の美しさは忘れない…」
タウティの言葉に「ふぅ」とため息をつくアリス。
「…リリス家の者になら、すぐ気づかれると思ってましたわ…」
「…私が気づいたのは…あの『ナッツ』の味に、あなたが反応したとき…」
ザリチェはアリスに目線を移す。
「あの…リリスの媚薬を養分に育てたナッツ…。それに気づけるのは…将来ゾディアックのメンバーになるための訓練を受けた者のみ…」
「…さすがリリスの直系ですわ。よくご存知で」
アリスはザリチェに対しにっこり微笑むと、目の前にある蛇口をひねった。
「……私も…あの『ナッツ』を食べて思い出しましたわ…。あなたたちのこと…」
ザリチェが綺麗に磨いた食器の泡を、アリスはゆっくりと流し始める。
「…『熱のタウティ』…『渇きのザリチェ』…」