ブラッディ アリス


「おお、もういたのか」

タイミング良く、その場に現れたのは…入浴を済ませたと思われる侯爵。

「お…お父様…」

戸惑い気味にキオネは席を立つ。

「そろそろ夕食の時間だな。…ん?アリスの執事はどうした?」

「忘れた物があって…一度屋敷に戻りましたわ。なにか御用でもございました?」

アリスは一瞬で表情を変え、にっこりと笑う。

「いや、用は特にないが…」
侯爵はそう言いながらメイドに何か合図をし、アリスの真正面に座った。

「そうですわ、侯爵。私…どうしてもシャルル様にお会いしたいの…。今どこにいらっしゃいますの?」

「な…!シャルルにか?!」

侯爵はアリスの突然の発言に動揺する。

「ええ…。このまま何も言わず別れるのは、アベル家当主の私としても酷ですわ」

「……」

何かを難しそうに考えながら、侯爵は下を向く。

「では、私も一緒に参りますわ。それならよろしいでしょう?お父様…」

キオネが静かに侯爵のそばに寄る…。




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