ブラッディ アリス
不安そうにキオネの顔を見る侯爵は、俄かに青ざめる。
「…そうだな…。食事が済んだら、案内してやりなさい。キオネ」
侯爵の妙な怯え様…自ら進んで案内すると言ったキオネ…。
「…」
アリスとカイルは黙って目を合わせ、頷く。
夕食後、ほどよく酒に酔った侯爵がトイレに行ったのを確認したアリスは、紅茶を飲みながら楽しそうに話すカイルとキオネをじっと見つめた。
「…?アリス?」
アリスの視線に最初に気づいたのはカイル。
「そろそろ、連れてってくれない?キオネ」
カイルには何も返さず、アリスは椅子から立ち上がる。
「連れてくって…お母様のとこ…ですの…?」
「当たり前じゃない」
思い出したようにカイルも席を立つ。
「…キオネ…僕も行くから…」
「…カイル…」
キオネはカイルを見つめた後、ゆっくりと立ち上がった。
「わかりましたわ。ついて来てくださいませ…」